100万円のくるまを売るより、1万人から100円を徴収する。

「異論のススメ」・佐伯啓思
IT系の情報産業がグローバル市場のなかで巨大な市場支配力をもつのは当然のこと。
 情報・知識は、通常の工業製品とはまったく違うから。
自動車やテレビなどは、無限に生産を拡大することはできない。
生産の拡張もある段階までくれば、追加的な費用が急増するため、いずれ生産の臨界点に達する。
 しかし、情報・知識の場合はまったく違う。

・設備も工場も人員も比較的少なく済み、
・生産や販売に関する費用はきわめて小さく、
・市場が拡大すればするほど、
追加的な費用が減少する。
経済学でいう限界費用逓減といわれる現象である。
この場合には、ほとんど無限に市場を拡大することができる。

勝利の資格

「パワー」
日英語表現辞典には
「どこまでも主観的な暴力的主張、つまりterrorismのこと」とある。
物理でいう「圧力」も英語でいうならパワーであり、地中のマグマは、最も弱い部分から噴出する。

権力的な、つまり威嚇的なパワーはより狂暴となる。
また横暴な権力は弱者と見なした者をねらい撃ちする。
チームの中にその「横暴なterrorism」があるならば、チームの弱者をねらい撃ちする。
このようなチームには勝利の夢を見る資格すらない。
(後ろから味方を撃ってどうする)

権力の判断が「社会通念」だ

破局的噴火のリスクはその発生可能性の立証がない限り現在の社会通念上容認すべきものである」広島高裁取消決定


判決や決定で「社会通念」を判断の基準として用いるのは、
わいせつ(判断)の ように、「普通の人の意識」を問題にする必然性のある特殊な場合に限るべきだ。
今回の争点は巨大噴火が原発に及ぼす危険性である。
時代や社会が変われば人の意識は変わるが、
破局的噴火のリスクは時代や社会が変わって増減するものではない。)

原発は危険性の有無という客観的な事柄が問題なのであり、
社会通念を判断基準にするのはきわめて不適切である。
権力を公正にチェックすべき裁判所が、
こんなあいまいな概念を持ち出したら、
権力側の考え方を「社会通念」と形容して、難しい判断から逃げることになりかねない。

瀬木比呂志 明治大法科大学院教授:著書に『絶望の裁判所』

J・D・サリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」

J・D・サリンジャーは一九一九年、マンハッタン生まれ。

父は裕福なユダヤ人だった。一九四二年、第二次世界大戦に従軍し、ノルマンディー上陸作戦などを経験。捕虜になったゲシュタポの尋問を請け負うなど、ホロコーストを目の当たりにする。

ドイツ降伏後、PTSDの治療を受けた。

 主人公ホールデンが、ライ麦畑に何千人も子供がいて、ときどき崖から落ちそうになってる。僕はその子供をキャッチする人になりたいだけだ。

心ここにあらずの饒舌(じょうぜつ)さで語り続けるのは、「危険だからここにはいられない」という、著者が戦場で被ったトラウマと、

「死んでいった人を助けたい」という、胸が張り裂けるような思いだ。

 ライ麦畑とは、戦場、子供とは、兵士のことだったのだ。

 本書は、本来語り得ぬはずの戦争体験を、青春小説に擬態して語った、一人の元兵士の渾身(こんしん)の咆哮(ほうこう)なのだ。

桜庭一樹 古典百名山:46

辺野古埋め立てを許すな

ささやかなお手伝い。

 

思考の及ぶところ

「虚しい・・・」と言いながら、現状を追認し、長いものに巻かれ、大樹の陰に寄る。
これがクールでスマートな生き方だということを言い出す若者たちがわらわらと出て来た。
社会のシステムは劣化し続けているが、このシステムの中以外に生きる場がない以上、その「劣化したシステムに最適化してみせる」他にどうしようがあるというのだ。
そう暗い眼をして嘯く虚無的な青年は、上にへらへらもみ手するイエスマンよりだいぶ見栄えがいい。

「こんな糞みたいなシステムの中で出世することなんか、赤子の手をひねるように簡単だぜ」という虚無的に笑ってみせると、
額に汗し、口角泡を飛ばしてシステムに正面から抗っている愚直な「左翼」とか「リベラル」とか「人権派」より数段賢そうに見える。
出世や金儲けはともかく、「スマートに見えるかどうか」ということはいつの時代でも若者たちにとって死活的な問題である。
というわけで、「ただのイエスマン」ではなく「身体の真ん中に空洞が空いたようなうつろな顔をしているイエスマン」が輩出することになった。

「空虚を抱えたイエスマン」より

刹那・永遠・無限

41年前、
1977年に打ち上げられたボイジャー2号は現在、太陽系の端にある、
無数の小さな天体が集まる「オールトの雲」をめざして、地球から約180億キロ先のかなたを飛行している。
オールトの雲の内側に到達するには300年、
太陽系の外に出るには3万年かかるとされる。
地球にデータを送信している原子力電池は、
2025~30年ごろに尽きると予想されている。


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