失せた国の力

国の力をほんとうにかたちづくるのは「ヴィジョン」です。 「ヴィジョン」とは、自分たちの国はこれからどういうものであるべきかについての国民的な「夢」のことです。「まだ存在しないもの」です。それを実現させるために国民たちが力を合わせる。そして、そのような夢を共有することを通じて人々は「国民」になる。そういうものなんです。まず国民が「いる」のではありません。
「あるべき国のかたちについて同じ夢を見る人たち」が国民に「なる」のです。その順逆を間違えてはいけません。

国力が衰えているというのは、そのような国民を遂行的に形成してゆく「夢」が(ついに)なくなったということです。
内田樹Blogより

 

『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき (内田樹の研究室)