きっと子や孫の世代まで

財務省理財局長の佐川宣寿氏の証人喚問を見ていて、アイヒマンを思い出した。
官僚たちの行動の説明として「忖度(そんたく)」という言葉が脚光を浴びた。
首相の指示の有無を問いつめられる佐川氏の姿が、
法廷でヒトラーの命令の有無を問われるアイヒマンに重なる。
アイヒマンヒトラーの意志を法とみなし、これを粛々と、ときに喜々として遂行していたことは確かだ。

ナチスの高官や指揮官たちは、ニュルンベルク裁判でそうであったが、
大量虐殺に関するヒトラーの命令の有無についてはそろって言葉を濁す。
「忖度」による行為は、一見、忠誠心などを背景にした無私の行為と見える。
しかしそうでないことは、ナチスの人々の例を見ればよくわかる。
豊永郁子教授 政治学