石破氏の説は正しいか

石破氏はTV番組で、国の交戦権について講釈したことを披露している。

その趣旨は

番組司会者に交戦権について質問した際に、「国の戦争をする権利でしょう」という答えに

「交戦権とは敵国兵力の殺傷・破壊、それらについての民事・刑事の免責、敵国領土の占領、そのにおける占領行政、敵国船舶の拿捕、中立国船舶の臨検など戦時国際法により交戦国に認められている諸権利の総体」

が正しいと諭した、とのことだ。

その時は何かおかしいと思ったが、下記書籍を読んで氷解した。

「国の交戦権」とは、国家の戦争をする権利自体を意味するとする説と、敵国兵力の殺傷・破壊、それらについての民事・刑事の免責、敵国領土の占領、そのにおける占領行政、敵国船舶の拿捕、中立国船舶の臨検など戦時国際法により交戦国に認められている諸権利の総体とする説とが対立している。

後者は「交戦権」の表現は国際法上この意味で用いられることが多いことを理由としている。

しかし、以下の諸点からみて、前者の説を妥当と解する。

  1. 通常の日本語の用法からみて、前説の方が自然である。
  2. 国際法上「戦争に訴える権利」(ius ad bellum)の観念は存在したし、国際法の歴史は、戦争との関係においては、その制限の歴史でもあった。
    現代においても、国際法は、一定の条件つきで、自衛戦争・制裁戦争に訴えることを認めている。
  3. 上にあげておいたような国際法上交戦国に認められている諸権利なしに戦争することは不可能であるから、それら諸権利の否認は国家の戦争をする権利自体の否認を当然に意味する。

憲法」杉原泰雄

政府解釈は一方的なもので学説としてはあい半ばということ。

この石破氏の説には安倍君も同じ趣旨の考えのようだ。

衆議院議員逢坂誠二君提出わが国が交戦権を行使できるのか否かに関する質問に対する答弁書

やはり同じ穴のムジナということか。