彼は総理と食事を共にして何を得たのか?

二月二十三日 編集委員・曽我豪
 今の安倍晋三政権は初期の健全な緊張感を失ったような気がしてならない。
アルジェリア人質事件の際、首相は正式発表前に「厳しい情報に接した」と語った。
多くの犠牲者が出るとあらかじめ国民に身構えを促す言葉だったとすれば
今回の新型肺炎に臨んでそのような練られた言葉は現れない。
初動の遅れは批判を浴び、野党との議員立法でも可能なはずの法整備も切迫感ある動きを欠く。
想定外という言葉の罪を幾多の災害で学んだのではなかったか。
危機管理の確かさが民主党政権とは違う自分たちの身上だと自負してきたのではなかったか。
折から昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は予想を超えるマイナスに転じた。
不安の様態は拡大し複雑に変異しつつある。
緩みと共に政権の危機想像力の欠如を省みるべき時である。