安倍が行ったことと私たちがやらなければならないこと。

Q-なぜ日本は失敗したのですか
内田 為政者が無能だったということに尽きます。それは総理会見を見れば一目瞭然です。
これだけ危機的状況にあるなかで、安倍首相は官僚の書いた作文を読み上げることしかできない。
自分の言葉で、現状を説明し、方針を語り、国民に協力を求めるということができない。
 ドイツのメルケル首相やイギリスのボリス・ジョンソン首相やニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事
まことに説得力のあるメッセージを発信しました。それには比すべくもない。
 安倍首相は国会質疑でも、記者会見でも、問いに誠実に回答するということをこれまでしないで来ました。
平気で嘘をつき、話をごまかし、平気で食言してきた。

一言をこれほど軽んじた政治家を私はこれまで見たことがありません。

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国難的な状況では決して舵取りを委ねてはならない政治家に私たちは舵取りを委ねてしまった。
それがどれほど日本に大きなダメージを与えることになっても、それはこのような人物を7年間も政権の座にとどめておいたわれわれの責任です。
安倍政権においては、主観的願望が客観的情勢判断を代行する。
「そうであって欲しい」という祈願が自動的に「そうである」という事実として物質化する。
安倍首相個人においては、それは日常的な現実なんだと思います。
森友・加計・桜を見る会と、どの事案でも、首相が「そんなものはない」と宣告した公文書はいつのまにか消滅するし、
首相が「知らない」と誓言したことについては関係者全員が記憶を失う。
たぶんその全能感に慣れ切ってしまったのでしょう、「感染は拡大しない。すぐに終息する」と自分が言いさえすれば、
それがそのまま現実になると半ば信じてしまった。

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 カミュは有名な小説『ペスト』のなかで、最終的に「ペストを他人に移さない紳士」の存在に希望を見出しています。
「紳士」にヒロイズムは要りません。
過剰に意気込んだり、使命感に緊張したりすると、気長に戦い続けることができませんから。
日常生活を穏やかに過ごしながらでなければ、持続した戦いを続けることはできない。
「コロナ以後」の日本で民主主義を守るためには、私たち一人ひとりが「大人」に、
でき得るならば「紳士」にならなけらばならない。私はそう思います。

http://blog.tatsuru.com/2020/04/22_1114.html より