知性に抵抗した凡人

世界についての知識を獲得するために、
人は複雑な経験を単純な感覚的経験に還元する。
ここで単純な経験というのは、原則として、
いつどこでも誰にでも、くり返され得るような経験である。
そういう経験の系列が、
科学者のいわゆる「観察資料」の基礎であり、
そこから出発し、長い推論の過程をとおって到達する結論が、
知識である。

加藤周一「ある哲学者の死によせて」より

政界についての知識を獲得するために、
菅は単純な経験を複雑な感覚に還元しようとする。
単純な経験というのは、
出自として、秋田の雪深い貧農に生まれたという聞き飽きた逸話である。
そういう逸話の系列が、愚者のいわゆる演説材料の基礎であり、
そこから出発し、貧弱な頭脳の過程をとおって到達する結論が、
利権である。