発言し続ける 山本義隆

原子力発電所の本質原子力発電所は、核分裂で発生したエネルギーの約3分の1を電力に変えるだけで、 残りの約3分の2は、海へ棄ててしまっている。
100万キロワットの発電所は、その2倍の200万キロワットに相当する熱を海に棄て、 海水の温度を上げてしまっている。
これは、直接に漁業を脅かすだけでなく、地球全体の熱汚染という立場からも無視できない問題になってきている。
(「原子力発電所 ―― この巨大なる潜在的危険性」1975, p.182; 「17の質問にこたえる 原子力発電はどうしてダメなのか」1978, p.46, 「原発はいらない」1979、p.68、参照)
 そもそも原発は、熱効率、つまり加えた熱のどれだけが電気に変わるのかの割合が 他の火力発電にくらべて悪いことが知られています。
これは、熱力学の理論により基本的には作動温度で決まるのですが、 通常の火力発電では40%を超えているのにたいして、原子力発電では30% 程度。 つまり1単位の電力を生むためには、通常の火力発電でせいぜい2単位余りの熱が必要なのにたいして、 原発では3単位を越える熱が必要とされます。
したがって原発ではその差2単位強の熱、つまり発電量の2倍以上の熱を環境に棄てているのです。

 世界中に多くの原子炉が建設されるようになった現在、核戦争の危険は、小国にたいする局地的な戦いの中で、原子炉を巻き込んだ形で成されるという可能性があることを、今回のロシア軍のウクライナ侵攻が明らかにしました。
そのことは、反原発運動のより一層の広がりの必要性と緊急性を示しています。そういう内容を込めて、ロシアのウクライナ侵攻に対する反戦運動は語られなければならないと思われます。