ドイツ人がオリンピックを懐疑的な目で見る理由

ベルリンオリンピック中止を防ぐために
ヒトラーは表向きには条件を呑み、
全ての宗教と人種を平等にオリンピックに参加させると約束しました。
しかし、その約束は破られます。
ユダヤ人を平等に扱っている」
ユダヤ人もオリンピックに参加できる」と示そうとナチス政権は、
ユダヤ人差別から逃れるため既にイギリスに渡っていた
ドイツ系ユダヤ人の走り高跳び選手
マーガレット・ランバート(1914年~2017年)をドイツに呼び戻します。

彼女は走り高跳びドイツ記録の保持者で、
メダル獲得も夢ではない実力者でした。
 なお彼女が戻った表向きの理由は「オリンピックに出場するため」
というものでしたが、後に「ドイツに戻らない場合、
ドイツに残っている家族に危害が及ぶとナチス政権に脅された」
と告白しています。
ユダヤ人の運動場使用が禁止されるなどの逆境下、
彼女は出場に向けてトレーニングを重ねました。

しかし、その努力が実ることはありませんでした。
ユダヤ人の出場をどうしても阻止したかったナチス
「あなたの走り高跳びの成績はオリンピックに出場するには十分ではない」
という手紙を送り、
世間に対しては「彼女は怪我をしたため、不出場となった」
と偽情報を発表したからです。
結局、ベルリンオリンピックナチスプロパガンダに利用されたわけです。

ナチスにはスローガン
「Olympia ? eine nationale Aufgabe
(オリンピックは我が国民の使命)」
のもとドイツ国民の結束を深め、
ゆくゆくはその結束を戦争に利用しようという目論見がありました。
 現在もドイツには
「純粋にスポーツが好きだからオリンピックを楽しみにしている」という人はもちろんいます。
しかしオリンピックが
「無邪気に喜べるイベントではなかった時代」があった
という歴史を多くのドイツ人は忘れていません。
サンドラ・ヘフェリン