日本文化の中の人々

日本文化とはなにか
日本文学史を振り返ってみると、二つのことが出てくる。
一つは、社会的な面でいう集団主義
そのプロトタイプは水田耕作をする村の共同体。
いろいろな社会生活の面で個人的ではなく、集団的な傾向がみられる。
思想的、あるいは心理的な面でいえばどういう価値も超越的ではない。
あるいは、超越的などのような価値にもコミットしない。

これがキリスト教文化圏の場合では、集団性はあるが
同時にその村の上にある権威である一神教の神にコミットする。
私の属している村のみんなが反対しても、私の言っていることが正しい、と思うことが可能になる。
聖書の言っていることを私は述べているのだとなる。
神は私を除く全会一致の村人よりももっと高いところにある。
それが超越的価値へのコミットメントにつながる。
日本文化とは何か、集団主義プラス超越的価値の不在、これが答えになる。

加藤周一「最終講義」